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大阪地方裁判所 昭和42年(行ウ)122号 判決 1968年11月29日

大阪市旭区生江町三丁目三五五番地

原告

松田房吉

右訴訟代理人弁護士

河村武信

東垣内清

仲重信吉

右訴訟復代理人弁護士

井上祥子

大阪市旭区

被告

旭税務署長

白井政男

右指定代理人検事

広木重喜

法務事務官 奥田五男

大蔵事務官 館石博

谷津守

右訴訟代理人弁護士

木村保男

川村俊雄

右当事者間の課税処分取消請求事件につき当裁判所は昭和四三年一一月一日口頭弁論を終結してつぎのとおり判決する。

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

本件の事実関係は、原告訴訟代理人において別紙(一)(二)のとおり陳述し、被告訴訟代理人において同(三)(四)のとおり陳述したほか、つぎに記載のとおりである。

当事者双方訴訟代理人は、原告が本訴において取消を求める各行政処分は昭和四三年一〇月二九日大阪国税局長の裁決によつていずれも取消され、その裁決は同月三一日原告に送達された右裁決の内容は原告の不服申立事由を認容したものである。と陳述した。

理由

原告が本訴において取消を求める各行政処分が昭和四三年一〇月二九日大阪国税局長の裁決によつて取消され、その裁決が同月三一日原告に送達されたことは当事者間に争いがない。

そうすれば、原告が本訴において取消を求める各行政処分は当初からなかつたものと看做され、本件訴はその対象がなく訴の利益がないことに帰着するものであるから不適法として却下さるべきものである。

よつて、訴訟費用の負担については民訴法第八九条に従い、主文のとおり判決した。

なお、原告は昭和四二年二月二一日本件各行政処分について大阪国税局長に審査の請求をなし、その後三ケ月を経過しても審査の裁決がなされないので本訴を提起したものであること、昭和四三年一〇月二九日の前示裁決は原告主張の不服事由と認容した内容のものであることは当事者間に争いがないけれども、このような事由があるからと言つて、右取消の裁決が、原告によつて本件訴を提起されていることによつて、そのような結論に到達したと即断することはできない。原告は前示のように昭和四二年二月二一日審査請求の後三ケ月を経過しても、被告の裁決がなされないため、適法に本訴を提起(同年一二月二七日)したものであるが、他面昭和四三年一〇月二九日の前示裁決をまつて本訴を提起することも可能であつた。そして、本訴と並んで原告の申立に係る審査請求手続が進行しており、そこでは原告において本訴におけると同一の攻撃・防禦をしていたのである。審査請求手続が進行している以上、被告が本訴において無益・不当な応訴をし、攻撃・防禦をしていたものということはできない。このような特別の事情の下においては、少くとも前示裁決がなされるまで、原告の本訴提起および訴訟追行は、必ずしもその権利の伸張ないし防禦に必要であつたということはできない。従つて訴訟費用を勝訴の当事者たる被告に負担せしめるのは相当でない。

(裁判長裁判官 山内敏彦 裁判官 藤井俊彦 裁判官 小杉文夫)

訴状

大阪市旭区生江町三ノ三五五

原告 松田房吉

大阪市北区兎我野町一二五番地 山菱ビル

右訴訟代理人弁護士 河村武信

同 東垣内清

同 仲重信吉

大阪市旭区内

被告 旭税務署長

「白井政男」

課税処分取消請求事件

訴訟物の価額 金一、八七〇、〇三〇円

貼用印紙額

請求の趣旨

被告が、昭和四一年一一月一四日付でなした昭和三九年度分所得税更正処分(更正所得額三、八七六、二四三円、更正税額一、〇三九、五六〇円、増差額七八八、四二〇円)及び過少申告加算税(六、五〇〇円)、重加算税(一九七、一〇〇円)の賦課処分並びに昭和四〇年度、所得税更正処分(更正所得額三、四七六、六一四円、更正税額八六七、一六〇円、増差額七一二、九一〇円)及び過少申告加算税(九、七〇〇円)、重加算税(一五五、四〇〇円)の賦課処分はいずれもこれを取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

請求の原因

一、原告は、肩書住所地において、松田電工の名称を用いて電気工事一般設計施工を営業とするものであるが、所得税に関して、被告に対し、

(1)、昭和三九年度、所得額一、六九一、一六三円、税額二五一、一四〇円

(2)、昭和四〇年度、所得額一、三五四、〇八八円、税額一五四、二五〇円

とそれぞれ申告したところ、被告は請求の趣旨記載の年月日に請求の趣旨記載の更正処分並びに過少申告加算税、重加算税の賦課処分をした。

二、然し、原告の右両年度の所得は申告のとおりであるから、被告の前示処分は取消されるべきである。

三、原告は、右両年度の前記処分について昭和四一年一二月二日、被告に対し異議申立をなしたが、被告は昭和四二年二月一七日それぞれ異議申立を棄却する旨の決定をした。

そこで原告は、昭和四二年二月二一日、大阪国税局長に対し、それぞれについて審査の請求をしたが、右の日から三ケ月を経過するも、右大阪国税局長は裁決を行わないので、前記処分の取消を求めるべく本訴に及んだ次第である。

立証方法

口頭弁論において随時提出する。

添付書類

一、委任状 一通

昭和四二年一二月二七日

右原告訴訟代理人弁護士 河村武信

同 東垣内清

同 仲重信吉

大阪地方裁判所

御中

昭和四二年(行ウ)第一二二号

請求の趣旨および原因の訂正の申立

原告 松田房吉

被告 旭税務署長

昭和四三年九月六日

右原告代理人弁護士 井上祥子

大阪地方裁判所第二民事部 御中

一、(一)請求の趣旨のうち「昭和三九年度分所得税更正処分(更正所得額三、八七六、二四三円、更正税額一、〇三九、五六〇円、増差額七八八、四二〇円)及び過少申告加算税(六、五〇〇円)重加算税(一九七、一〇〇円)の賦課処分」とあるのを「昭和三九年度分所得税更正処分(更正所得額三、八七六、二四三円、更正税額一、〇三九、五六〇円、増差額七八八、四二〇円)のうち総所得金額一、六九一、一六三円、税額二五一、一四〇円を超える部分及び過少申告加算税(六、五〇〇円)重加算税(一九七、一〇〇円)の賦課処分」と訂正する。

(二) 昭和四〇年度所得税更正処分(更正所得額三、四七六、六一四円、更正税額八六七、一六〇円、増差額七一二、九一〇円)及び過少申告加算税(九、七〇〇円)重加算税(一五五、四〇〇円)の賦課処分」とあるのを

「昭和四〇年度所得税更正処分(更正所得額三、三九四、九六一円、更正税額八六七、一六〇円、増差額七一二、九一〇円)のうち総所得金額一、二七二、四三五円、税額一五四、二五〇円を超える部分及び過少申告加算税(九、七〇〇円)重加算税(一五五、四〇〇円)の賦課処分」と訂正する。

二、請求の原因一の(2)のうち

「所得額一、三五四、〇八八円」とあるのを「所得額一、二七二、四三五円」と訂正する。

昭和四二年(行ウ)第一二二号

原告 松田房吉

被告 旭税務署長

昭和四三年五月一〇日

被告訴訟代理人 木村保男

川村俊雄

被告指定代理人 広木重喜

奥田五男

館石博

谷津守

大阪地方裁判所第二民事部 御中

答弁書

請求の趣旨に対する答弁

原告の請求はいずれもこれを棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

ただし、昭和四〇年分の更正所得金額は、三、三九四、九一六円である。

請求の原因に対する答弁

第一項は、認める。ただし、(2)の昭和四〇年分の、申告所得金額は一、二七二、四三五円である。

第二項は、争う。

第三項は、認める。

被告の主張

追つて、書面をもつて準備する。

添付書類

選任書 一通

指定書 一通

昭和四二年(行ウ)第一二二号

原告 松田房吉

被告 旭税務署長

昭和四三年七月一日

被告訴訟代理人 木村保男

川村俊雄

被告指定代理人 広木重喜

奥田五男

館石博

谷津守

被告準備書面(一)

一、原告は、訴状記載の肩書住所地において、松田重工の名称で電気工事一般の設計施工を業としているものである。

二、原告は、被告の係争年分の所得税の調査に際し、収入、支出の項目、金額を記載した帳簿書類を提示した。

そこで、被告は、原告の提示した右帳簿書類を検討し、その取引先等についても調査した結果に基づいて本件更正処分をした。

三、原告の係争各年分の所得金額は次のとおりであり、その範囲内でなした本件更正処分には違法な点はない。

項目 金額(昭和三九年分) 円 金額(分昭和四〇年) 円 備考

1 収入金額 三八、六〇三、〇五一 三五、四九〇、二六五 原告収支計算書計上額

2 仕入金額 一、六九六、七六九 二、〇九七、五八五 右同

3 差引金額 三六、九〇六、二八二 三三、三九二、六八〇 1-2

4 公租公課 二九〇、七一〇 九一、九八〇 原告収支計算書計上額

5 水道光熱費 六〇、〇〇〇 六三、四〇〇 昭和四〇年分は原告収支計算書計上額

6 旅費通信費 三一九、二六六 七七四、一一〇 原告収支計算書計上額

7 接待交際費 一一〇、三三〇 一八〇、二七六

8 修理費 一八八、六一〇 二七〇、六九〇 原告収支計算書計上額

9 消耗品費 一一四、六四七 五一、四七五 右同

10 福利厚生費 五九六、九五六 九六四、五九九 右同

11 現場経費 一、二五一、一二三 一、五六七、〇一五 右同

12 減価償却費 二二三、八〇〇 二六八、三〇五 右同

13 雑費 八八、九〇〇 一一六、八二〇 右同

14 雇人費 七、四八二、二五三 一二、八三〇、七六一 昭和三九年分は原告収支計算書計上額

15 外注費 二一、八六四、三九九 一二、六二四、一四一

16 必要経費計 三二、五九〇、九九四 二九、八〇三、三七二

17 差引金額 四、三一五、二八八 三、五八九、一〇八 8-16

18 事業専従者控除額 一一二、五〇〇 原告申告額

19 譲渡損 八一、六五三 原告収支計算書計上額

20 所得金額 四、三一五、二八八 三、三九四、九五五 17-(18+19)

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